期末一括仕訳-非資金仕訳その2
前回は、非資金仕訳のポイント非資金仕訳を発生主義におきなおすものの代表的な仕訳について解説しました。
今回は、非資金仕訳の後半、資金の動きにかかわらず記録する非資金仕訳について解説します。
資金の動きにかかわらず記録する非資金仕訳の代表例
資金の動きにかかわらず記録する非資金仕訳の代表例としては次のようなものがあります。
①固定資産の減価償却費の計上
②固定資産の除却損の計上
③各種引当金の計上及び取崩し
それぞれ解説していきます。
①固定資産の減価償却費の計上
土地や建物、パソコン、ソフトウェアと言った長期にわたって使用する資産を固定資産と言います。
そのうち土地や建物のように目に見えるものを有形固定資産、ソフトウェアのように目に見えないが資産として価値のあるものを無形固定資産と言います。
さらにその中で、使用により価値が減少するようなものについて、減価償却という手続きをしていきます。
仕様より価値が減少するようなものとは、 建物や車両、パソコンなどです。土地や美術品は一般に使用によって価値が落ちないものであるため、減価償却は行いません。
ソフトウェアは使用によって物理的に価値が減少するわけではありませんが、陳腐化やライセンスの期限などにより最終的に価値が減少するため、同様の手続きを行います。
減価償却の手続きのイメージは次のようになります。
仕組みはシンプルで、例えば建物を100で取得し、その建物の耐用年数が5年であった場合、100を5で割って、一年間に20ずつ減価償却費を計上していきます。
この20の減価償却費は費用(コスト)として、行政コスト計算書に計上します。
仕訳としては次のようになります。
右側の減価償却累計額というのは、減価償却をプールしていくための 勘定科目です。
毎年減価償却するたびに減価償却累計額が積み上がっていきます。
地方公会計の重要な指標の一つに、有形固定資産減価償却率(老朽化比率)がありますが、有形固定資産の取得価額を分母、減価償却累計額を分子として計算します。
この指標より、有形固定資産の減価償却の度合い、すなわち老朽化の状況を把握することができます。
非常に重要な勘定科目です。
また、貸借対照表には固定資産として建物100を計上しますが、減価償却を行うことにより減価償却分だけ資産の金額が小さくなっていきます。
仕訳と財務書類の関係は次のようになります。
建物の記載の仕方としては、貸借対照表に購入した時の金額(取得価額)を記載し、その下に減価償却累計額をマイナスで記載します。
2年目は次のようになります。
②固定資産の除却損の計上
固定資産は耐用年数が終了するまで減価償却を行います。
しかし、減価償却の途中で固定資産を除却(廃棄)するような場合は、減価償却が終わり切っていないため、固定資産に価値が残っています。
この価値の部分を、固定資産を除却した時に費用として計上するのが固定資産の除却損の計上手続きです。
この固定資産の除却について次のような設例で考えてみます。
-設例-
・×0年度末に取得した公民館(取得価額1,000、耐用年数50年、翌年度より年割 償却)を45年経過後の×45年度末に除却した場合、×45年度における仕訳はどのようになるか?
これまでの減価償却の状況を図に表すと次の通りです。
左の図のグレーの部分が、45年経過後の固定資産の価値になります。
45年後の仕訳は次のようになります。
1行目は例年通り減価償却の仕訳、
2行目が除却の仕訳です。
仕訳と財務書類の関係は次のようになります。
③各種引当金の計上及び取崩し
最後は発生主義の代表的な項目引当金についてです。
引当金の詳細は今後説明する予定ですが、今回は退職手当引当金を例に説明します。
職員の退職金は現行の歳入歳出決算書では、現金支払い時に一括で計上します。
地方公会計では、在職中に既に退職金の支払い義務が発生しているものとして、退職するまでの期間にわたって退職金を積み上げて行きます。
下の図のようなイメージです。
上記を仕訳にすると次のようになります。
以上が主な非資金仕訳項目の内容となります。
次回は、固定資産台帳や資産負債内訳簿の役割について解説します。
記事を気に入っていただいたら、ぜひイイネボタンをお願いします。
(SNS等へのリンクはありません)
大変励みになります。