【インタビュー】精華町の地方公会計の取組みについてお聞きしました

今回は精華町の地方公会計の取組みについてご紹介します。

はじめに

ご存知の方も多いと思いますが、京都府の南端に位置する精華町は、古くから地方公会計に熱心に取り組まれています。

私は現在精華町に隣接する木津川市に住んでいますが、 10年前までは精華町に住んでいたこともあり、非常に身近な町でもあります。

セミナー等で精華町の取り組みについてお聞きしたことは何度もあったのですが、改めて取り組みについて知りたいと思い、先日精華町の地方公会計担当の方にお話をお聞きしました。

なお、本ご意見は町としての正式見解ではなく、個人的な意見も含まれていると思われますことを最初にお断りしておきます。

 地方公会計の取組みのきっかけ

(中川)

本日は業務ご多忙のところ、お時間を頂戴しましてありがとうございます。

精華町さんは地方公会計について非常に先進的な取り組みをされており、研修会などでよく紹介させていただいています。

古くは「まちの家計簿」で早稲田大学のパブリック・ディスクロージャー表彰を受け、最近では統一的な基準における日々仕訳の導入や、一般財団法人地域総合整備財団のモデル事業として採択されるなど、公会計や公共施設マネジメントで先進的な取り組みをされています。

そのように先進的な取り組みをされることになったきっかけについて教えていただけませんでしょうか。

精華町

精華町は関西学術研究都市に指定され、 平成10年あたりから大型の研究機関の誘致や住宅地の開発と、これに伴う道路、下水道などの基盤整備を先行して行ってきました。

現町長である木村町長が就任したのが平成15年ですが、債務残高が大きく増える一方、税収は頭打ちで予算編成に大変苦労していました。

バランスシートを初めて作ったのはちょうどそのころです。

また、厳しい財政状況を住民に知ってもらうため、広報誌としてバランスシートも含めた決算状況を記す「まちの家計簿」や予算版の「まちの羅針盤」を作り始めました。

「まちの家計簿」と「まちの羅針盤」はこちら

www.town.seika.kyoto.jp

(中川)

精華町は、この「まちの家計簿」と「まちの羅針盤」について、早稲田大学パブリックサービス研究所のパブリック・ディスクロージャー表彰を8年間連続で受賞しています。

パブリック・ディスクロージャー表彰の結果はこちら

これらの資料で一番良いなと思うのが、総合計画から予算の関係、予算から決算までの一連の流れがきちんと見渡せることです。

そしてそれが一般会計にとどまらず特別会計公営企業、地方公会計、財政健全化法といろんな角度から分析がされており、必要な情報がコンパクトにまとまっています。

そして凄いのが、 毎年記載の仕方が変わり、どんどん進化しているところだと思っています。

精華町

早稲田大学パブリックサービス研究所のパブリック・ディスクロージャー表彰では、木村町長自ら、授賞式に毎年参加しています。

毎年記載を見直しているのは、受賞のプッシャーもあります(笑)。

また、木村町長は、住民向けの会合あいさつ、内部でのあいさつの機会のたびに、精華町の公会計の取組みを積極的にアピールしています。

(中川)

最近では、一般財団法人地域総合整備財団のモデル事業に応募し、資産の耐用年数を調査したり、統一的な基準(※1)による日々仕訳(※2)を導入し、さらに積極的に取り組まれています。

 ※1 地方公会計財務諸表の直近の作成基準。総務省により平成26年4月に公表

※2 民間企業のように取引の都度仕訳をする方法。日々仕訳に対し期末一括仕訳という方法があり、 これは現行の歳入歳出決算データを年度末に一括で複式簿記に変換する手法である。

精華町

モデル事業や日々仕訳に積極的に取り組んだ背景として、平成20年頃、リーマンショックや国の集中改革プランの影響により財政が逼迫し職員採用を絞ったことにより、中堅どころの職員層が薄く、人材育成が課題であったことがあります。

一般財団法人地域総合整備財団のモデル事業では、建物だけでなく建物の付属設備ごとに、法定耐用年数と実際の使用可能年数との相違について調査したり、将来の更新費を精緻に見込むということを行いました。

(詳細はこちら(P62以降)をご覧ください)

精華町は先にもお話ししたように、 関西学術研究都市の指定に合わせて、急速に大規模な公共施設やインフラの整備を行っています。

ちょうど建物の建設から20年くらい経過し、建物の附属設備の更新時期を迎えつつあります。

これらの更新費を正確に見込むためには、建物といった大きな単位ではなく、建物の附属設備毎の正確な耐用年数を把握する必要があったのです。

建物付属設備の建物全体に占める割合は、一般的に3割と言われており、実際調査したところおおむね3割程度でした。

金額的な割合も高く、建物付属設備の耐用年数を精緻に見込むことは重要といえます。

また、日々仕訳については、各課の職員が仕訳を行うことで資産の概念などへの意識を持ってもらいたかったこと、地方公会計を財政課だけの取組みにしたくなかったということがあります。

財務書類、固定資産台帳の作成

(中川)

統一基準による財務書類や固定資産台帳の作成についてシステムや庁内での役割分担について教えていただけますでしょうか。

精華町

システムは財務書類の作成、固定資産台帳とも標準ソフト(※3)を利用しています。日々仕訳なので、財務会計システムの改修を行っています。

 ※3 総務省地方公共団体情報システム機構が開発した、地方公会計の財務諸表や固定資産台帳を作成するソフトウェア。地方公共団体に無償で提供されている。

日々仕訳は各課の職員が行いますが、固定資産台帳の登録は財政課が行っています。

精華町では以前から予算を非常に細かいベースで設定していました。

歳出については細々節で例えば委託料について、建設なのか、清掃なのかをもともと設定していたので、これに仕訳を結びつけています。

勘定科目だけでなく、元々事業や施設でも細かく分けていたので、平成29年度決算からは、施設別財務書類も作成しています。

平成29年度決算附属資料一般会計及び各特別会計 P621以降をご覧ください。

財務書類、固定資産台帳の活用

(中川)

精華町での、財務書類や固定資産台帳の活用について教えてください。

精華町

精華町では今後、 一時期に整備した公共施設の更新費が一時に来ることになるため、これを平準化することが一番大きな課題となっています。

そのため、 固定資産台帳や公共施設等更新費用試算ソフトで更新費を見込み、これを平準化していくための「公共施設等総合管理基金」を創設し、既に積立を開始しています。

また、使用料の見直しをする取り組みを始めたところで、「精華町公共施設使用料等審議会」おいて昨年から議論をしており、もうすぐ答申が出る予定なのですが 、この中で地方公会計の発生主義の費用である減価償却費も含めて負担してもらおうという話が出ています。

これは、当初の建設時は補助金等が出ますが、 建て替え時には自分たちで負担をしないと行けないため、これに備えるという意味合いもあります。

(筆者注)

精華町公共施設使用料等審議会第1回審議資料に添付されている下記の表は、使用料の見直しにとても参考になりそうです。

施設の類型別の負担率や、対象となるコスト、減免等の考え方がコンパクトにまとめられています。

他団体参考事例一覧表

(中川)

なるほど、減価償却費も含めて利用者に負担してもらうとなると、地方公会計の情報が必要になってきますね。

また、 すでに 施設別財務書類も作成済みなので、その準備も万端ですね。

ところで、精華町さんではさらに地方公会計の活用の取り組みとして、将来の貸借対照表や行政コスト計算書の作成をされているとお聞きしました。

この辺りについてもお聞きできますでしょうか。

精華町

教育予算(小中学校)のH29セグメント分析を基準に、将来5年の教育予算の予定貸借と行政コストを作成しました。平成29年度末を基準に新規投資が一切なかったものとして機械的にいったん計算した上で、これをもとに向こう5年間で予定している新規投資や更新投資を加減算して作成しました。

作成した目的は、財務書類がどうしても決算情報としてのみであって、なかなか予算とリンクしていないのをリンクさせようと思ってです。各自治体でも実施計画や財政計画を作成されていると思いますが、発生ベースでも同じことが必要だと思います。経営戦略の策定などが求められている公営企業の財政シミュレーションは当然に発生ベースで行うでしょうし、同じことですよね…。

ストック情報の見える化、非現金支出である減価償却費は、過去の分(決算)だけ行えばよいのではなく、将来の分(予算)も見える化することで、より具体的な検討に繋がるのではと考えています。

(中川)

将来の貸借対照表や行政コスト計算書の作成は、発生主義予算を意識されていてのことだったのですね。

公営企業の財政シミュレーションは当然に発生ベースで行う、ということですが、確かに水道料金の算定にあたっては、発生ベースで原価計算を行い、これをもとに料金を決めています。先ほどの公共施設使用料の見直しで、減価償却費を含めて料金を負担してもらうということとつながっている気がします。

いろいろお話をうかがっていると、いろんなものがつながっていることがわかってきました。

精華町は、早わかり公会計の手引きにも寄稿されたということでご案内いただきました。

こちらについても別の機会に紹介させていただこうと思います。

本日は貴重なお話を伺うことができました。

お忙しいところお時間を頂戴し、ありがとうございました。

固定資産の更新費平準化のための公共施設等総合管理基金は、他の団体でも取り入れたいと考えているところがたくさんあると聞いています。

これからも地方公会計の先進団体として、いろんな情報発信を期待しています。

0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA