大阪市の地方公会計制度「都市経営とディスクロージャー」Q&A編

先日関西大学の「都市経営とディスクロージャー」における大阪市の地方公会計制度の講演の様子について紹介させていただきました。

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講演後の質疑応答についてご紹介します。

なお、この質疑応答は録音していたものを再生しながらまとめなおしたものですが、ちょっとわかりづらかったところなど、あとから補足している点があること、発言者の発言内容は個人的見解であり、市としての公式な見解ではないと思われること、前後の文脈も含めて全てを再現できているわけではなく、正確な理解につながらない可能性があることをあらかじめお断りしておきます。

目次

大阪市地下鉄の民営化に関する質問

質問1:交通事業のような公共性の高い事業を民営化することについて、公共性(安全、安心、福祉等)をどう確保するのか。大阪市は地下鉄民営化についてどう考えているか。

堀氏:昭和8(1933)年に開業し、長年、民間の企業会計に近い地方公営企業として経営されてきた地下鉄事業そのものは、民鉄5社が実施していることと大きく変わらない。

民鉄でも(安全、安心の確保は共通の課題であり)公共性、公益性がないとは言えない。

民営化後の公共性の確保は議会でも主要論点の1つだったが、例えば大阪市の資本的関与を残した(地下鉄は100%、バスは34.7%)ほか、会社と(市民の代表である)議会が直接意見交換できる会議体を設けることなどにより、2度の(廃止条例議案の)否決を経て最終的に公共性が確保できると判断されたと思う。

(筆者補足:前段の講演で、堀氏は「官と民の役割の再定義」という言い方もされていた。そのイメージは、経済性を発揮しながら事業の持続的発展をめざす企業経営と、例えば民営化後も継続されている敬老優待乗車証のように市が税金を投入してでも行う福祉的措置を区別して考えるということのようである。)

質問2:公共性を高い事業を、利益追求を目的とする民間会社に委託することのメリットは。

堀氏:この点も議会でも議論となった。バス事業は自立的経営が成り立たない厳しい状況だったが、地下鉄事業は2003年度に経常黒字を計上して以降、2005年度からは一般会計から繰り入れられる補助金を除いても黒字が確保されるようになり、2010年度には累積欠損金を解消した。

今後、人口減少や少子高齢化に伴う利用者減少が見込まれる中で、民営化のタイミングとしては、この時期しかなかったと思われる。

民営化のメリットとしては、(事業主体にとって)従来負担の必要のなかった固定資産税や法人税等の租税公課が増加する一方で、現状に比べ高利率だった時代の企業債の借換えができれば金利負担が大幅に減る(金利1%の減で50億円のコスト削減効果)、民間鉄道事業者に準じた人員配置の見直し等による人件費削減効果が見込まれる、経営(事業展開)の自由度が高まる、といったことなどを想定していた。

そんな中で、市民サービスの向上策として先取的にできることを実際に示すこととなり、下記の取組が前倒しで行われた。

▶運賃の値下げ、終発延長(終電の時間を遅らせた)、駅ナカの充実、トイレの美装化 など

地方自治法などの)法令や市のルールにとらわれず機動的かつ柔軟に市民のためのサービスができるようになることが一番のメリットだと思われる。

質問3:市民の暮らしを守るためには、経済的感覚と公共的感覚のバランスが必要。どう考えるか。

堀氏:民鉄5社の部長クラスの方に、当初の民営化プロジェクトに入ってもらい、実際に現場を見て、人員配置など非効率な部分をどんどん指摘してもらった。

そのほか、民営化に伴い非効率な部分を見直そうと、職制、給与の支給体制まで俎上に乗せるなど、いい意味で経済性を意識した検討を行った。

一方、例えば水道事業についてはコンセッション方式への移行が検討されてきたが、水はライフラインでもあり、世界各地で民営化した水道事業を再公営化しているなど、より公共性が高いということで、まだ結論はでていない。

質問者追加コメント:交通機関は採算性がいいとは言えない。民鉄は駅周辺の不動産開発と抱き合わせで採算性を確保してきた。世界的に見ても交通事業は採算がとりにくい。地下鉄会社が民営化してやっていけるかは危惧している。

馬場教授(評価の専門家):イギリスに昨年1年間行っていた。

イギリスではNPM(ニュー・パブリック・マネジメント)の一環として民営化も推進されてきた。

しかし、コストを重視しすぎたことにより、問題がいろいろ起こっている。

最近はNPG(ニュー・パブリック・ガバナンス)が重視されるようになっている。

NPGとは、行政のほか市民団体や企業などいろんな主体が集まって議論をし、だれがどう関わるかを決めていこうというしくみ。ここでは、財政的な側面と公共的な側面の両方を評価しようとしている。キーとなるのはエビデンスである。大阪市ではエビデンスについてどう考えているか。

堀氏:新公会計制度の数値はエビデンスとなる。大阪市では事業別財務諸表を作成しており、施策の結果がどうだったかということが検証可能である。事業ごとにすぐにフルコストがわかり、非財務情報(利用人数や面積等)と組み合わせれば単位当たりコストなどを知ることができ、自分たちの実施している事業が効率的、効果的に実施できているかの確認や、対外的な説明が可能である。

馬場氏:何を評価するかによって必要なエビデンスは変わってくるのだが、第一段階としてデータが出ないことには議論もできない。今後の大阪市の実務について楽しみにしている。

大阪市の公会計制度に関する質問

質問4:大阪市の事業分析ツール(事業分析シート)はどのような場面で使うのか、非財務情報は掲載しているのか、公表されているのか。国もフルコストの分析シートを試作しているところで、参考とさせていただきたい。

竹田氏:各所属において事業分析・評価を行う際のツールとして活用してもらうために作ったものであるが、現段階では活用が進んでおらず公表はしていない。

大阪市における行政評価としては所属ごとに経営課題単位で運営方針を作成しているが、これに統合できないかを検討している段階。

事業分析シートは大阪市財務会計システムにおいて対象事業名を入力すると、過去3年分の貸借対照表と行政コスト計算書、指標(グラフ含む)が一覧で出力される。ここに事業の目的、期待される効果、目標数値や、利用者数などの事業の成果を手で入力し、分析を行なうもの。

質問者:財務省公会計室で国の公会計を担当している。国の方ではフルコスト情報を予算編成に生かすことができないか検討中である。具体的には、過去3年間の事業別のフルコスト、単位当たりコストと予算要求ベースのフルコスト情報が対比できるようなシートを試作中である。今後の予算編成で活用できればと考えている。

質問5:大阪市の公会計制度の導入には、人件費も含め7億円かかったとのことであるが、見合うだけの成果は出そうか。

竹田氏:アカウンタビリティ面では分かりやすい公表資料の作成を進め、議会でも取り上げられ議論も行われているところであり、一定評価していただいていると考えるものの、金額換算は難しい。マネジメント面では正直なところ、事業の見直しなどによりそれだけの金額的効果は上がっているとは言えない。現在はマネジメントに活用するための環境整備を行っている段階。

質問6:リアルタイムの財務情報の把握をするためには、委託料や時間外手当、減価償却費の月次按分などが必要と思われるが、そのような月々の計上をしているのか。

竹田氏:委託料、減価償却費、時間外手当などは月々で計上している。ただし、市役所庁舎の減価償却費などは事業別に按分計上まではしていない。

質問7:公表されている市民利用施設のコスト情報等について、官庁会計から公会計のデータに変更したことで見え方がどのように変わったか。また資産マネジメントへの活用について、現在の検討状況は。

竹田氏:公表資料の様式的には市民の方への見え方は大きくは変わっていない。掲載内容については施設のコスト、受益者負担の情報については従来の数値と新公会計のフルコストの数値の両方を見せるように変更した。

利用料金の改定や施設の統廃合の材料の一つとすることを検討しているが、現段階では具体的に活用するところまでは至っていない。

質問8: 任意事業(施設別)財務諸表の自動集計の取組について、各課で光熱費は施設別でなく一括で支払っている場合、入力時に分割する負担が増えるのでは。コード入力をどのようにしているのか。小規模施設への対応は。

竹田氏:個別施設単位で任意事業を設定している施設は、基本的に個別支払いをしているが、その他の施設では複数施設でまたがっているものもある。これについては個別施設毎の按分計上まではしていない。(大阪市の公会計制度では)事業は施策事業、管理事業、任意事業に分類され、概ね予算の目と合わせている施策事業とその下の管理事業は事業を選択しないと財務会計システムが次に進まないように設定している。任意事業は入力しなくても進めることができるため、入力もれが生じる恐れはある。正直、間違いに気づき後から修正することがあったが、年々減っては来ている。研修や会計室によるチェックなどで対応している。

(筆者補足:管理メリットの出るものについて任意事業として設定するので、メリットの出ない小規模施設はそもそも対象として設定していないと思われる)

質問9:減損損失の計上は必要ないか。日々仕訳のデメリットは。出納整理期間はやめた方がいいのでは。

竹田氏:詳細な検討ができておらず、総務省基準でも採用されていないことから減損会計は実施していない。日々仕訳のデメリットとしては、各所属の経理担当職員の負担や、職員への研修、会計室のチェックの事務負担、それらに対するコストがかかることが挙げられる。

出納整理期間は地方自治法で定められており、現行の官庁会計と整合性を図る上でも、公会計上、出納整理期間を廃止することは難しい。

質問10:設備更新などの中長期の課題に対する予算配分の権限と事業セグメントの管理権限は?

竹田氏:予算配分は各所属が予算要求をして財政局が取りまとめや諸調整を行っている。事業の管理は所管所属が行っている。

質問11:システムの導入にあたりどのように実施したか。その他、他の公共団体との一体化や波及などについてどのように考えるか。

竹田氏:同様の制度を先行して導入していた大阪府と協定を結び、大阪府のシステム仕様書を入手しカスタマイズして導入した。大阪市は独自基準のため、その他の公共団体との一体化等は現段階では実施していない。

質問12:各課が財務諸表をベースとした予算要求ができるようになったとして、予算査定においてもフロー、ストックベースの議論ができる素地を形成するうえで、何が重要な課題となるか。

堀氏:財務情報を用いたマネジメントについて、現状では事業別のマネジメントを中心に考えているが、予算の効率化・適正化など「予算のマネジメント」にいかに反映させるかという観点もあると思う。そのためには財務諸表の技術的な改良が必要になるかも知れないが、これについての検討はこれからであり、財政局と今後詰めていかないといけない。

柴先生:当研究会のテーマでもあり、神戸大学の松尾先生も含め、改めて研究会でも取り上げていきたい。

質問13:大阪市の財政局のかかわり方は積極的か。

堀氏:積極的というか、非常に協力的である。意思疎通が十分図れる関係にある。

質問14:業務改革における実際の活用例。どんなメリット・デメリットがあったか。

竹田氏:先ほどの実務報告で、債権回収対策の手順の汎用例を紹介したが、これは母子父子寡婦福祉貸付資金事業において実施した結果を踏まえ汎用例化したもの。普段のマネジメントを公会計によって深化していけることがメリットと考えている。

デメリットは職員負担であるが、逆に公会計を使って職員負担を軽減するような仕組を考えたい。

質問15:全職員に正しい仕訳ができるよう教育することは可能なのか。仕訳を入力させるのでなく、自動仕訳にしてしまうのがよいのでないか。

中川:出納事務を行っている職員が、財務会計システム入力の際に追加で仕訳を入力しており、全職員が実施しているわけではない。

教育が本当にできているかは、正しく財務諸表ができているかということからわかるものであり、大阪市に聞いていただいた方がよいことであるが、日々仕訳の団体については一般的に、導入初期段階では、確かに間違いが見られる。しかし、各所属で実施する仕訳は限られているため、だんだん落ち着いてくる。

自動仕訳については、今日も参加の宇城市が日々仕訳の自動仕訳を採用しており、東京都方式においても世田谷区が導入するなど、日々仕訳もどんどん進化してきているところである。

柴先生:自動仕訳にすると職員の会計への理解が進まないため、自動仕訳には反対である。

ざっとこのような質疑応答が繰り広げられました。

見ていただいたとおり、非常に多くの質問をいただき、書ききれませんでしたが、質問者からさらに登壇者の回答へのコメントももらうなど、非常に有意義な内容で、時間をオーバーして終了しました。

私自身、非常に大きな気づきをもらいました。

これからの大阪市の取組みと情報発信に、とても期待しています。

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