大阪市の地方公会計制度の全貌が初めて明らかに「都市経営とディスクロージャー」報告

平成31年1月12日、関西大学経済・政治研究所主催「都市経営とディスクロージャーセミナーが開催されました。

都市経営とディスクロージャー

今回のテーマは、大阪市の地方公会計制度(大阪市では企業会計的な複式簿記、発生主義の制度を新公会計制度と呼んでいますが、ここでは一般に使用される地方公会計と呼びたいと思います)でした。

大阪市の地方公会計制度について大阪市の方が外部向けにお話しされるのは初めてのことです。

そこでコメンテーターを務めさせていただきましたのでその様子を報告します。

目次

大阪市政の改革における公会計的視点の導入経緯について

トップバッターは、大阪市会計管理者兼会計室長の堀氏。

大阪市の地方公会計制度の導入経緯についてのお話がありました。

大阪市の特徴の1つとして、東京都方式による日々仕訳を取り入れていることが挙げられますが、単にそのような会計制度を導入しました、ということでなく、この制度が大阪市政改革のツールとして組み込まれている点が非常に特徴的です。

というのは、もともとは大阪市の地方公会計について本格的な取り組みが始まった発端は、平成17年に設置された市政改革本部の9つのプロジェクトに公会計チームが置かれたことに遡ります。

そしてご存知のとおり平成23年からは、橋下氏が大阪府知事から大阪市長に転身し、大阪府で先行して取り組まれていた東京都方式による日々仕訳を大阪市でも導入することになりました。

市政改革では、これまでの悪しき慣行(過去いろいろ報道されてましたね)、先例と訣別するため、情報公開の徹底、経営の仕組み(目標設定や経営形態の見直し、民間解放、会計的視点の導入など)が次々と導入されました。

過去、大阪市には包括外部監査でも関わったことがありますが、これまで関わったどの団体よりも情報が開示されており、必要な資料が容易にホームページから入手できましたし、全国的に見てベストプラクティスと言うべき取り組みがたくさんありました。

包括外部監査人も感心していましたので、この辺りは本当です。

民間企業の経営には会計が不可欠ですが、この会計的視点が市政改革の中に組み込まれているのです。

堀氏は大阪市において、この経営的視点、会計的視点をまさに活用した数々の改革に従事してこられています。

中央卸売市場の改革や破綻三セク処理、地下鉄、バス民営化、博物館群の地方独立行政法人化などにまで言及し、ご自身の体験を交えながらお話をいただきました。

これらの事例はいずれも会計的な視点ぬきにはなし得ないものです。

例えば、破綻三セクの事業継続の検討、株式売却額の算定、民営化後の収支シミュレーション、経営目標の設定、出資額の算定など。

大阪市では当たり前のように、公会計的な視点が行政運営に取り入れられているのだということが実感できました。

おそらく大阪市では今後、地方公会計が当たり前のツールとして活用されていくだろうと言うイメージを持ちました。

大阪市における公会計制度改革の取組について

次に、会計室新公会計制度担当課長の竹田氏より、具体的な大阪市の公会計制度の取り組みについて報告がありました。

大阪市では、地方公会計制度の導入の目的として、アカウンタビリティの向上とマネジメントの強化の二つを明確に打ち出しています。

制度の詳細は下記のページに詳しいので、ぜひこちらをご参照ください。

www.city.osaka.lg.jp

気になるマネジメントへの活用ですが、庁内に「活用促進調整会議」を設置し、全庁的な検討がされています。

具体的には、これまで作成していた説明資料の数値を財務諸表の数値に置き換えるといったことも含まれます。

たとえば、受益者負担率の算定をこれまで官庁会計ベースで行っていたものを事業別財務諸表の数値に置き換え、フルコストによる受益者負担率を算定できる様式を整備しています。

HPでも公表されていますが、壮観です。

大阪市の施設ごとのフルコスト、受益者負担率情報

大阪市は地域ごとに同様の施設を多く保有しているので、施設マネジメントにも有効と思われます。

そのほか、施設管理コストの検討と債権回収対策への活用方法、手順などを説明した活用例を配布し、すでに延べ8所属11事業で活用されたとのことです。

また、資産マネジメントや施策事業の見直しに活用することを検討中とのことです。

まだ道半ばだとおっしゃっていましたが、受益者負担率の算定の取組のように、全庁的に取り組んで説明資料などを公会計の数値に置き換えていっており、着実に日常業務に組み込んでいっているという印象を受けました。

コメント

お二人の講演の後、 僭越ながら私の方で大阪市の報告に対するコメントをさせていただきました。

実は私は大阪市とご縁があり、平成25年度から5年間、この大阪市の公会計制度の導入支援業務に携わってきました。

新たな会計制度も軌道に乗ってきているようで、今回このような報告をお聞きできたのには感慨深いものがあります。

私からは大阪市の特徴として次の三つがあるとお伝えしました。

1.とにかく大きいこと

一般会計だけでみても、15兆円の資産があります。

新たな公会計制度移行の取り組みで一番に実施されたのが、固定資産台帳の整備でしたが、 これだけもの資産をきちんと固定資産台帳に登録したというのはすごいことです。

またとにかく組織も大きく、方針を徹底するのも並大抵ではありません

研修ひとつとっても、 課長対象の研修をすれば500名ぐらいの方が対象なので、同じ研修を3回実施。

また対象者は課長だけではありません。

その下の階層にも続きます。

公会計制度の推進者が500名で3回に分けて研修をすると言ったように、研修だけでもすごい回数をこなす必要があります。

これだけ大きな組織に、 新たな会計制度を導入するというのは、 非常に大変なことだったと思います。

2.精度が高いこと

大阪市では日々仕訳を採用しています。

日々仕訳とは、民間企業のように都度仕訳をする方法です。

これに対し、地方公会計の財務諸表の作り方として、 期末一括仕訳という方法があります。 これは歳入歳出決算のデータを年度末に一括で仕訳に置き換えるという方法です。

期末一括仕訳では、通常財政課などの特定の部署の人が仕訳を行います。 また固定資産台帳は、仕訳を行うタイミングで登録するのが一般的です。

仕訳や固定資産台帳を作成するのが年度末になるので、業務量も大きくなりますし、タイミングも遅いため、どうしても精度が粗くなりがちです。

これに対し、大阪市が採用する日々仕訳では、実際にその内容についてよく知っている所属の方が仕訳を行います※し、同時に固定資産台帳の登録を行います

(※システム改修により、財務会計システムの入力時に追加で仕訳を選択するシステムとなっています。財務会計システムは各所属で入力することになっています。 決算整理は、会計室でまとめて実施した方が効率的なものについては会計室で、徴収不能引当金など所属で把握しているものは所属で行うなど、役割分担が定められています。)

そのため、期末一括仕訳よりも非常に精度が高いということが特徴として挙げられます。

3.局別連結を行っていること

大阪市では、この公会計をマネジメントに使うことを強く打ち出しています。

一般的に、連結財務諸表は、まず一般会計の財務諸表を作成し、 これに特別会計や公営企業の財務諸表を合算し、 さらに第三セクター等の財務諸表を合算して作成するというのが一般的です。

これに対し大阪市では、 まず特別会計や公営企業、 第三セクターを含めた局別の財務諸表を作成します。

次に、局別財務諸表を合算して、大阪市全体の連結財務諸表を作成しています。

マネジメントを局単位で行っているため、マネジメントに局別の連結ベースの財務諸表を活用することを前提とした制度設計がされているのです。

これは、大阪市特有のやり方であり、大阪市が「マネジメントに地方公会計を活用する」ことを強く意識している表れだと思います。

最後に、大阪市が実施している市民モニターアンケートについて大阪市に対し、質問をしました。 このあと討論の部が予定されており、そちらで回答をいただこうと思ったのです。

大阪市では、あらかじめ登録されている市民モニターに、この公会計制度の認知度、理解度のアンケート調査を行っています。

市民モニター798名中、619名の方から回答を入手されています。

配布資料に、理解度についてはおおむね6割の方が理解できたと書いてありましたが、認知度の記載がなかったので、認知度はどのくらいだったのかが気になり、質問をしました。

おそらく、アンケートが来るまでに知っている方はほとんどなく、アンケートが来て初めてその存在を知った方が大半だと思うのです。 まず実態を知ることが、地方公会計のステップの一つだと思いますので、どのくらいの認知度なのかを知りたいと思いました。

あとからお聞きしたところ、アンケートが来るまでに公会計の財務諸表を見たことがある人は5.3%だったそうです。

また、アンケート結果を参照したところ、以前から大阪市が新しい公会計制度を導入したことを知っていた人のうち、

ホームページで知った人 60%

テレビ、新聞報道 40%

大阪市以外のインターネット 17.5%

口コミ 10%

その他 7.5%

だったようです。

最後、理解を深めるために必要な情報があれば教えてください、という質問に対し多かった意見は、

・公金の使い道、支出に無駄がないかなど(9件)

・市財政の実態、取組に関すること(9件)

・事業、施設の収支などの詳細な情報(5件)

・市財政の将来ビジョン・予測(4件)

社会保障制度・福祉事業に関すること(4件)

だそうです。

私は市財政の将来ビジョンが一番気になります!

大阪市保有する一般会計だけで15兆円の資産の将来の更新費、維持費など将来的にどう推移するのかなど知りたいです!

理解度についても、詳細に理由を調査されていますので、ぜひ関心のある方は下記をご覧ください。

www.city.osaka.lg.jp

最後に、1点だけ大阪市に要望をお伝えしました。

総務省の統一的な基準では、住民のニーズとして、

① 世代間負担の公平性が図られているか

② 効率的にサービスが提供されているか

③ 選挙の際、どの候補者を選べばよいか

があり、公会計情報はこれらへの情報を提供するとされています。

政治的なニュアンスをもった③は難しいのではと思うのですが、ぜひ単に理解度を聞くのでなく、そのような住民ニーズに答えられているか、答えられていないなら、どこを改善すればよいか、ということを聞いていただきたいと。

住民など外部利用者の地方公会計の利用は私の今年のテーマでもあります。

住民ニーズに地方公会計情報が答えられているか、どのように改善していけばいいか、のヒントになるのでは、と思っています。

この後、フロアから質問をいただき、回答するセッションが続くのですが、質疑応答は次の続編をご覧ください

miyukicpa.hatenablog.com

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