日本地方自治研究学会 日本公認会計士協会報告

はじめに

日本公認会計士協会では、今年7月に下記の報告書を公表しました。

 

公会計委員会研究報告第24号「地方公会計の論点と方向性」

https://jicpa.or.jp/specialized_field/20190731rfv.html

 

私は報告書のとりまとめに関わったのですが、学会で報告書の発表をすることになり、2019年9月22日(日)に大阪学院大学で開催された、日本地方自治研究学会の定時総会にて発表してきました。

 

日本地方自治研究学会は「地方自治の科学化、近代化、民主化のための理論および 政策等の調査研究をすすめ、地方自治の発展に貢献することを目的」として1984年に設立された団体です。

私は5年前からこちらの学会に参加し、地方公会計に関し発表等行ってきました。

 

昨年からは、会計士協会の代表として発表。

今年も引き続き会計士協会の代表として発表させていただきました。

 

報告要旨は以下の通り。

これまでの地方公会計の成果

・一部の先進団体で、地方公会計を活用する事例が登場

・固定資産の老朽化の進展や、将来の更新費用の増加が、固定資産台帳整備により見える化した

・使用料や手数料の算定に当たり、減価償却費をコストと考え、これを負担させる地方公共団体が登場

・固定資産台帳の整備や複式簿記の導入可能性が確認

 

マネジメントへの活用における課題

① 財務書類作成負担の軽減、早期化

② 固定資産台帳とその他の台帳の重複

③ セグメント別財務書類作成方針の開示

④ セグメント別財務書類作成の協力体制

⑤ 固定資産台帳の精緻化

⑥ 公共施設マネジメントと固定資産台帳

 

統一的な基準における制度上の課題

① 耐用年数見直し

② 固定資産の計上基準

 

地方公会計制度に関する将来的な課題

① 情報ニーズに対応した公会計情報の見直し

② 信頼性の確保

③ 情報入手の困難性への対応

④ 内部統制制度との連携

 

日本地方自治研究学会の学会の特徴として、発表者に対し、討論者の方がつきます。

討論者の方からは、報告のポイントの解説や質問があり、それに対する回答を行いました。

また、他の参加者からの質問もありました。

 

主なやりとりは次の通りです。

 

質問者:討論者 横浜国立大学大森教授

 

(質問)

「 統一的な基準」の課題 と活用策の提案 は、どのような研究方法を用いて明らかにしているか 。

(回答)

アンケート調査等ではなく、研究員が統一的な基準導入の中で、実感として感じている共通認識

や導入事例 をまとめた。

 

(質問)

課題に対して提案されている対応策 や予算と財務書類の連携、ライフサイクルコスト について実

際の自治体に適用できるか 。

 

(回答)

マネジメント上の課題として挙げているものは、 実際にすでに 実施している団体があり、適用で

きると考えている。また、予算と財務書類の連携 について、予算が発生ベースでないため民間企業の予実対比のような使い方はできない。 財務書類の結果や予測情報を予算に反映させるような使い方となる。 ライフサイクルコストはご指摘のとおりで、狭義の意味での地方公会計の活用ではなく管理会計の 観点からの提案で、どのように数値を把握して使うかについては別途検討が必要である 。

 

(質問)

地方自治体において比較可能性はどこまで重要か、なぜそこまで比較可能性を追求すべきなのか。

(回答)

それぞれの団体内部の情報だけで課題等を分析できるのであれば比較は不要であるが、現状では

「あるべき水準」自体が分からず、他の団体と比較したいというニーズが強い。基準が同じでなければ比較ができないことから、今回セグメントについて検討を行った。また、他団体との比較可能性を確保するためにも、他の団体と連携していく必要があると考えている。

 

(質問)

セグメント情報の活用は、結局は、資源の削減という結論をより導くだけに終わらないか。

(回答)

今後予算は縮小し、総額としては削減せざるを得ないであろう。しかし削減をデータに基づき判断する、より成果の高いものに資源を配分していくという点で意味がある。 活用目的として使用料見直しもあり、この場合は資源の削減でなく収入の増加につながる。

 

(回答)

大森先生から直接お話はなかったが、投影資料に KPI についての質問があるので、お答えする。

KPI との関連付けをどうするか、とのことであるが、集計したコストに対し KPI を設定するのでなく、分析の目的があって、それに対し KPI を設定し、一方でコストを集計することになると思う。関連付けをするようなものではない。また、 KPI の妥当性について、一定の担保が必要であろう。

将来的に財務諸表監査が導入されるようになれば、指標も監査の対象とすることが考えられる。

 

その他参加者からの質問

 

(質問)

地方公共団体では内部統制が導入されるのに合わせ、監査委員監査における監査基準が公表された。しかし、公会計の財務諸表はこの監査基準の対象とされていない。監査の対象として働きかけるべきでなかったか。

 

(回答)

監査の対象とするには財務諸表の法制法制化が必要である。今回報告書を出すタイミングでは、監査基準の制定には残念ながら間に合わなかった。財務諸表の法制化と監査については、今後も行政に対する働きかけを行っていきたい。

 

(質問)

固定資産台帳の精緻化が必要であるとのお話であるが、現在作成されている固定資産台帳はそもそも誤っていてこれではダメだという指摘をすべきではなかったか。

 

(回答)

固定資産台帳の作成負担は極めて重く、更新作業もままならないような団体もあり、ダメだと言われても対応できない団体が多いのが現状だ。信頼性が低いかもしれないが、作成負担が重い現状を踏まえた上で、少しずつ改善していくしかない。

 

以上、質疑応答を含めて45分間の発表でしたが、若干時間をオーバーしつつも、あっという間に終わりました。

 

今回発表した内容は、

新公会計制度普及促進連絡会議主催

「公会計推進ミーティング2019」

令和元年11月13日(水曜日)14時00分~17時00 

於:成城ホール(世田谷区立砧区民会館)http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/10/10/documents/01_01a.pdf

 

でもお話させていただく予定です。

特にこちらでは、学会での報告内容に加え、公会計のマネジメントへの活用についてお話をさせていただきます。

ぜひ皆様のご参加をお待ちしています。

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