初めての大学非常勤講師~文教大学「公会計講義」報告

はじめに

文教大学経営学部の学生に対して公会計の講義を行いました。

夏休みの集中講義で、私は非常勤講師という位置づけです。

大学生向けに講義を行うことはこれまでも何度も行ってきましたが、講義の一コマを受け持つゲスト講師のみで、 このような非常勤講師は初めてです。

集中講義なので、三日間で15コマ(22.5時間)の単位を受け持ち、生徒の評価もしないといけないと言うもので、とにかく準備が大変でした。

 

この話は、とても仲良くしていただいてる、文教大学経営学部の石田晴美教授から1年前にいただいたもので、公会計であるということ、非常勤講師はなろうと思いできるものではなく、非常に貴重な経験と思い引き受けすることにしました。

 

しかし、公会計で15コマも何を話すかとても悩みました。

そもそも公会計というと、私が専門とする地方公会計や国の公会計といった狭義の考えもありますが、石田先生の意図としてはもっと広く、非営利組織の会計も含めた広義の会計を考えておられるよう。

あずさ監査法人時代、公益法人や独立行政法人の監査や公営企業、社会福祉法人のコンサルティングはやってきましたが、15コマを埋められるほどそれぞれに詳しいわけではなく、何よりも、地方公会計以外の資料を一から作成しないといけないことになります。

これは無理だとあきらめ、広義の公会計について概要としては話はするが、狭義の公会計に絞ることとしました。

そうした場合、やはり身近な事例をテーマに考えてもらうのがより有用と考え、大学のある茅ケ崎市を取り上げることにしました。

 

可能であれば茅ヶ崎市役所の方をゲストに迎え、茅ヶ崎市の財政や公会計、施設マネジメントなどについてご講演をいただき、さらにこれを受けて学生たちに公会計や行政に関してのプレゼンテーションを行うという構成としました。

茅ヶ崎市役所には何のつてもないまま財政課に連絡をすると、会っていただけるとのこと。

そして、おっかなびっくり財政課を訪れたところ、なんと講演を引き受けてくださるとのこと。

本当にありがたかったです。

 

講義の概要は次のとおり。

8月20日 1限 イントロダクション 
  2限 公会計の概要(講義1) 
  3限 地方公会計制度(講義2) 
  4限 国、地方自治体の財政状況(講義3) 
  5限 テーマ決め、構成の検討(グループ討議) 
8月21日 1限 茅ヶ崎市への質問まとめ(グループ討議) 
  2限 構成案、質問事項についての意見交換 
  3限 講演(茅ヶ崎市からのゲスト講演) 
  4限 講演への質疑応答 
  5限 発表準備1(グループ討議) 
8月22日 1限 発表準備2(グループ討議) 
  2限 発表準備3(グループ討議) 
  3限 テーマ発表(茅ヶ崎市からのゲストも聴講) 
  4限 テーマ発表への講評、意見交換 
  5限 授業内試験(レポート) 

 

ということで、上記の通り、私がべったりお話するというのではなく、学生たちが自主的に学習する時間が多くなっています。

その後なんとかテキストを間に合わせ、茅ヶ崎市役所の方とも何度か打ち合わせをして当日を迎えました。

 

授業初日(講義)

自己紹介や授業のイントロダクションのあと、授業開始。

大学生向けの講義ではいつも、大学のある市、県、そして国の貸借対照表を示し、財政構造の違いや巨額の資産を保有していること、それに対する負債がどれだけあって、 住民がどれだけ負担しているかどういう話をします。

そして更に将来の人口動向と、自分たちが働く世代になった時にどのぐらいの負担が生じるかというお決まりの話。

詳しくはテキストをご覧ください。

 

受講生は、全員で9人でした。

そこで3人ずつ3グループに分かれ、発表してもらうことにしました。 

 

授業2日目(ご講演)

午後から茅ヶ崎市のゲスト講演があるため、午前中はプレゼンの準備とゲストへの質問準備をします。

午後、ゲスト講師到着。

講演内容は次のとおり。 

  1. 財政とは

  2. 予算について

  3. 決算について

  4. 地方債について

  5. 茅ヶ崎市の貯金について 

  6. 財政指標から読み取る茅ヶ崎市の財政

  7. 茅ヶ崎市の公共施設について

  8. 地方公会計について

パワーポイント64ページにも及ぶ資料で、約2時間にわたり講演をしてくださいました。

次に質疑応答の時間を設けましたが、質問のための準備をしっかりしていたため、非常に有意義な質疑応答になったと思います。

各学生たくさん質問していました。 

 

ご講演の後は各グループに分かれ発表の資料作成。

明日の発表の資料の目処がついたら、早めに帰っていいよと言いましたが、結局全員が授業時間いっぱいまで残って資料作成をしていました。

 

授業3日目(発表)

午前中は引き続き発表資料の作成。

遅れてくる子がいるかと思いきや、みな時間前までには集まり、資料作成に取りかかっていました。

ところで、今回の授業では全員にパソコンを持ってきてもらいました。

学校の wi-fi 経由で私のホームページにアクセスしてもらい、テキストはそこからダウンロードしてもらいました。

資料作成も、情報入手もすべてパソコンです。

 

紙を使ったのは、最初のホームページのアドレスを書いたものなど一部のみです。

最後の課題提出もデータで送ってもらい完了。

印刷を考えなくていいのはとても楽でした。

 

そしていよいよ発表の時間。

発表の時間には前日にゲスト講師として講演してくださった茅ヶ崎市の財政課の方、そして文教大学の石田先生も駆けつけてくれました。(受講生のほとんどは石田先生のゼミ生のため) 

 

ここで急遽、石田先生の発案により学生のプレゼンを録画することに。

学生にとっては緊張のプレゼン発表の時間となりました。

 

学生の選んだテーマはそれぞれ次の通り

1班 茅ヶ崎の財務状況から見た少子高齢化

2班 茅ヶ崎市の公会計における財務書類の開示の在り方について

3班 茅ヶ崎市のインフラ・公共施設老朽化に対する財政状況について

 

これだけですごく興味深いテーマだと思いませんか?

 

それぞれの班とも、創意工夫に富んでとても面白いプレゼンテーションでした。

例えばある班の出だしは、次のようなフレーズで始まります。

 

「皆さんは2050年の日本はどうなっていると思いますか?」

 

公共施設には多額のお金を投じているが、他社と比べると若年層への投資が少ないなど、調べたデータを挙げての説明などもありました。

 

そしてはっとしたのが、こちらの提案です。

ソーシャルメディア運用による若年層へのアプローチ(をすべき)

<具体案>

TikTokやYouTubeなど若いユーザーの多い媒体でPR動画を投稿する

 

これを見て、自治体では高齢者の方へのアプローチは非常に熱心にされていますが、若者へのアプローチができていないのではないかと。

高齢者の方はインターネットが使えないから紙媒体で配布するといったように、高齢者への配慮は非常になされています。

逆に若者は、紙媒体から情報を得るという習慣はもはやほとんどないと思います。

しかしこのような若者への配慮ってそもそもされているでしょうか。

なおざりにされてるような気がします。

 

そして YouTube の例として次の URL を挙げてくれていました。

 

宮崎県小林市 / 移住促進PRムービー “ンダモシタン小林”

https://www.youtube.com/watch?v=jrAS3MDxCeA

 

こういうことを自治体がしてしてくれたら若者も見るのに、とのこと。

ちょうどその話を聞いた夜、たまたまこんな動画が目に飛び込んできました。

 

「無関心は ださいたま!」埼玉県知事選があの漫画とコラボ

https://twitter.com/i/events/1164037096413073408

 

投票率は32・31%(前回26・63%)だったそうです。

大いに効果があったのでは、と思います。

その他、結局データがうまく見つからず検証できなかったのですが、

直営していたものを委託にどんどん切り替えているのに職員数が増えているので、結局全体としてコスト高になっているのではないか、という疑問を持ち、 茅ヶ崎市のデータを色々調べていた学生もいました。

それぞれ、非常に勉強になったのではないかと思います。

 

授業アンケート

最後にみんなが書いてくれたアンケート(一部)をご紹介したいと思います。

1.授業の感想

・政治家を選ぶことの重要性を学べてよかった。今度からは政治にも関心を向けたい。

・構造物の老朽化に伴い、維持管理や更新をするという事実を、恥ずかしながら意識してこなかった私にとって、大量更新時代の到来というテーマはとても大きなものだった。何十億もの金をかけて建設した建物を維持するのにも更新していくのにも、同等かそれ以上の金がかかるという事実を念頭に入れて、茅ヶ崎市や私の在住する自治体の状況を見ていきたいと思う。

・少子高齢化による社会保障費の増加、施設の老朽化による維持費の増加などから、国の財政が危機的状況にあり、それに伴い地方の財政も圧迫されていると学んだ。私たちの生活や将来にも密接にかかわってくることであるため、財政の問題について、常に関心を持ち続けたいと思う。

・様々な地域で問題を抱えていて、それの問題解決策、現状を理解すべきだと感じた。事業別での課題を深く追及し、経費削減などをすべきだと思う。日本中、高度経済成長期に建設した建物が多く様々な地域で修繕費や改善費がかかっていくのでそれの対処法を考えていかなければならない。

2.茅ケ崎市財政課のご講演から学んだこと

・市役所では貸借対照表だけでなく、固定資産台帳なども公開しており、税金がどういったところで使われているのか自分たちでも確認できるようになっている。また、分析指標も見ることで、その自治体の資産形成度や持続可能性なども確認できることが分かった。

・細かいところまで丁寧に説明していただいて分かりやすかった。特に普段使わないほどの大きいお金が動くときの説明の時、家計に例えて説明していただいて、非常にわかりやすかった。

・地方公共団体のリアルな実情を知ることができて大変有意義だった。特に、財務書類の開示が遅れてしまうことについて。財政課の方々は当然私たちよりも市の財政に深くかかわっているので、現状はかなり厳しい状況ながらも、努力されていることと思う。そのため、私が感じたのは、納税者である市民が、民意として声を大きくしていくことが大事だと考えた。

・茅ヶ崎市の現状を理解することができた。若年層の政策より新しいものを建てたり高齢者向けの政策が多かったりしたので私たちが改案を発信していくべきだと強く思った。知らなかった茅ヶ崎の政策などを知れたことが今後の役に立っていくと思った。

3.グループ発表から学んだこと

・少子高齢化が進んでいるため、育児サポートなどにもっと力を入れてほしいなと感じた。グループ内での意見交換や発表を通して、茅ヶ崎の財政にも興味が出てきたし、地元の会計情報も気になったので調べてみようと思った。

・大きな印象として残っているのは、データの裏付けの大切さである。データにかかわらずそれを主題にしたいならば、それの根拠であるとか、実際の数字などを添えることで、同じデータでも説得力が大きく変わることを学べた。

・限られた時間の中でグループメンバーと、グループの方向性やそれぞれの役割を決め、根拠に基づいた資料を集めることの大変さを学んだ。資料探しに取り掛かることも重要だがその基盤となるテーマ・構成をしっかり決めてから動くことの重要性を学んだ。

・茅ヶ崎市と平塚市との比較や佐世保市の事例から、現在の茅ヶ崎市の公会計における財務書類の開示の在り方について、その特徴と課題を学ぶことができた。その課題の解決に向けて、私たち学生が今後どのようにかかわることができるかを考えていきたい。

 

ということで、以上が集中講義の様子のご紹介でした。

最後のアンケートの記載は、単位をもらわないといけないのでリップサービスも大いにあるのでしょうが、それでも知ってほしいと思ったことをみな的確に書いてくれていました。 

楽しかったです!と書いてくれた子も。

 

初めての集中講義はまずまずの成功に終わったかなと思います。

 

今回の講義は、茅ヶ崎市財政課の協力がなければできませんでした。

茅ヶ崎市財政課には、お忙しいなか講演に駆けつけてくださり、学生のプレゼン発表も聞いてコメントもしていただき、本当に感謝です。

0