【開催報告】第4回「公会計と地方財政の勉強会」

 はじめに

令和元年9月14日(土)に第4回「公会計と地方財政の勉強会」を開催しましたのでご報告します。

今回はいつもの大阪市大大学院梅田サテライトでなく、大阪市立阿倍野市民学習センターにての開催で、20名の方にご参加いただきました。

 

テーマと講師はこちら。

『財政健全化において地方議会が果たすべき役割とは』

杉本 健太氏(元寝屋川市議会議員)

『行財政運営における管理会計の可能性』

上鶴 久恵氏(市職員、元公認会計士)

 

財政健全化において地方議会が果たすべき役割とは

まず最初に、地方議会の現状から。

議員の年齢構成の方や在職年数などの表が示されました。

私が関心があるのは年齢構成と男女比。

この構成によって、日本の地方自治体の政策の傾向が分かると思うからです。

想像はしていましたが、思った以上に高齢です。

男女比も思っていた以上。

とはいえ、公認会計士の女性の割合も14%なので、同じくらいです。

しかし、これでは子育てがしにくい世の中になるのも無理はないと思いました。

少子化も進むわけです。自分も含めてですが、若い世代と女性がもっと政治に関心を持つ必要があります。

 

そしてご自身の経験に基づき地方議員の実態を色々とお話いただきました。

会派に入ることが前提の地方議員の常識(は世間の非常識)とでもいうべき世界が存在し、正論では物事が進まないことなど。

 

そして、肝心の財政健全化において地方議会が果たすべき役割のお話。

こちらについて、議会には非常に強い権限が与えられています。

1つは議決権。

条例の制定や改廃、予算の承認や決算の認定において、多数決にはなりますがこれを止めることもできます。 

そして検閲検査権

地方公共団体の事務の管理、議決の執行及び出納を検査することができる権限とのこと。

これは具体的にイメージしにくいですが、地方公共団体の作成する資料を直接検査することができるということでしょうか。

また、監査請求権。

こちらは、監査委員に対し、当該普通地方公共団体の事務に関する監査を求め、監査の結果に関する報告を請求することができるというもの。

その他にはいろいろありますが、重要ではと思うのが調査権。

これは百条調査権とも呼ばれるそうで、ニュースなどで証人喚問の様子が報道されているあれですね。

 

議会には上記のような権利を行使することで、住民に代わって行政の執行を監視し、コントロールすることが可能となります。

財政の健全化もそのうちの一つです。 

財政の健全化において地方議会が適切に機能するためには、まずは各議員が地方財政を正しく理解することが欠かせません。

しかし、実際には地方財政を正しく理解できている議員は少数とのこと。

たしかに地方公共団体の仕事は広範に渡るし、全てを知るのは不可能です。

また、議員さんにより専門分野もそれぞれ異なり、財政についてすべてを知っている必要はありません。

とはいえ、行政運営にはお金は欠かせません。

持続可能な地方財政のために、ぜひ地方議員の方には地方財政を学んでほしいものです。

 

行財政運営における管理会計の可能性

後半の上鶴氏は、現在市の職員であり、元公認会計士でもあります。

行政職員としての立場から、行財政運営に会計を機能させる方策についてお話しいただきました。

管理会計とはマネジメントのための会計の考え方で、いろんな手法があります。

会計、もっと行財政運営に使っていけるのに。

私が常々感じていた会計の可能性について、余すことなく語ってくれました。

 

少し長くなりますが、当日のお話を上鶴氏にまとめていただきました。

講義要約

本講義の趣旨

・マネジメントへの「公会計」の活用が進んでいない

→「複式簿記と発生主義」を活用しようと言われていると、捉えてしまうので、ミスコミュニケーションが生じる。

・現金収支ベースのセグメント情報や執行管理情報、財産台帳等が自治体内部にすでに存在しており、新たな別の情報を使うニーズは感じていない。

・課題がない訳ではない。既存のしくみにどのような課題があり、その課題を、「会計」を機能させることによって、どう解決していくかを考えなければならない。

・既存のしくみに適合的な形で、会計がその本来の機能を発揮できるようなシステムを構築していくことが必要である。

 

①公共施設マネジメントと会計情報

・施設改修の先送りは、財政指標を悪化させないが、水面下で事故リスクが上昇し、将来の改修費用も増大していく。

・設計、建築時にライフサイクルコストは決まってしまうので、意思決定会計が重要になる。将来の必要財源を見積もって妥当性を検討する必要がある。

資産台帳に関する課題

・固定資産台帳は、全市の資産を一覧できる。利用により、縦割りの市民対応が改善し、問合せ対応も削減できる。

・設備の更新履歴等も明らかになるため、施設マネジメントに有用。

・施設コードや地番といった資産管理に不可欠な情報を有していなければ、使えない。内部管理目的で使用している台帳と一元的に情報を整備することが必要。

・執行情報と紐づけて(複式簿記により)固定資産台帳を更新することがうまくいかない。歳出額をあらかじめ執行時に資産と費用に分けておくために、予算細節等を活用することが有効。

→課題解決により、業務が効率化し、住民サービスが向上し、資産管理情報の精緻化に資する。

 

セグメント分析に関する課題1

・予算事業コードと公会計事業(施設)コードが異なるため、コードを新たに入力する手間が生じる。執行管理情報とセグメント情報が結びつかない。予算事業コードの見直しや公会計事業(施設)コードとの紐づけを整理することか必要。

・現金収支ベ-スのセグメント情報(施設別収支、事業評価、決算説明資料等)が存在しているが、システムの執行情報と紐づいていない場合には、集計に手間がかかり、管理部門では把握しづらい。

→課題解決により、業務が効率化し、フルコスト情報を利用することにより情報の精緻化に資する。

 

②働き方改革に資する会計情報とは

・BPRはプロセス毎にかけた時間を調査・分析することにより最適化を図る手法が一般的。

・時間の記録は手間がかかるため、調査終了後は継続されない傾向がある。

・所属や事業別コストを人件費も含めて把握することにより、継続的なモニタリングに資する。

・成果とコストの対応関係を示す必要がある。働き方改革の目標は、生産性(=成果/コスト)の向上。

・会計情報は、課題発見のために活用できる

 

セグメント分析に関する課題2

・人件費予算の所属への配分が課題(人事部門に一括計上されていることが多い)

・セグメント設定における他都市との比較可能性の確保

 

③会計システムをマネジメントシステムとして機能させるには

・予算執行の進捗管理は所属で予算事業毎に月次で実施している。未収・未払も把握。

フルコスト情報は期末のみの把握でも足りるケースが多い。

・予算決算の差異分析を行う環境はあるが、分析が不十分であることも多いのではないか。コスト概念の理解を深める必要がある。

・コスト分析は非財務情報と合わせて行う。

 

④責任会計と部局別バランスシートの機能

・大組織では枠配分予算の採用、部局の裁量による予算配分が行われる。保有資産のマネジメントが部局の責任であれば、部局のバランスシートとフルコストの行政コスト計算書に基づき、意思決定をする必要がある。(責任会計)

 

⑤自治体における管理会計と財務会計

・自治体運営には住民(納税者)の信頼と協力が不可欠である。管理会計と財務会計の区分は、もともと曖昧なところがある。

・管理会計情報が開示されることが望ましい一方、定型的な業務については他都市比較も有益と考えられるため、比較可能性にも留意する必要がある。

・企業および住民とのパートナーシップによる地域経営においては、コミュニケーション手段としての公会計による財務諸表が重要である。

 

⑥まとめ

・既存の管理運営手法を見直し、内部統制を整備する上で、新たな手法(公会計)も組み込む形で融合させることが必要。業務の有効性と効率性および財務報告の信頼性が高まり、情報開示の質も高めていくことができる。

 

ここまで。

上記について、会計の専門家である私には非常によく理解ができ、そしてガンガン響いてくる内容でした。

しかし、論点が多岐にわたり、専門的でもあったので、会計や財政の知識がない人には少し難しかったよう。

ぜひ今後時間をかけて掘り下げていきたいと思っています。

 

何度も話に上がったのは、財政について議員だけでなく、職員もほとんどわかっていないのだという話。 

やはり財政を一番わかっているのは財政課なので、そこは財政課に頑張っていただいて、財政状態を誰でもわかるように説明していただきたいということです。

そして議員にも、職員にも、住民にも、財政を自分ごととして考えてもらうしか、今後の少子高齢化や地方財政の悪化に対応する道はないんじゃないかと思います。

見える化と内外にわかりやすく説明することの重要性を、今回の勉強会では特に学びました。

私は地方財政について、公会計の専門家であるという強みを活かし、地方財政を分かりやすく見える化していく取組みを進めていきたいと思います。 

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